万年筆

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 文章を書くという行為において、パソコンが主流になってしまった現代。
昔に比べれば、あきらかに「手書き」をする時間が少なくなった。けれども、そんな私が最もこだわっている文房具は万年筆。

 万年筆の始まりって知っている?
『ニューヨークで保険外交員をしていたルイス・エドソン・ウォーターマンはある大口契約を取り交わす席で、万全を期し新品のペンを用意していた。しかし、サインをするときにこのペンからインクが漏れ、契約書に染みを作ってしまう。大急ぎで新しい契約書を持って戻って来たのだが、すでにライバル会社に契約をとられた後だった。この悔しい経験がウォーターマンに万年筆を開発させたのである。
そして1883年にウォーターマンは、世界で初めて毛細管現象を応用した「万年筆」を誕生させた。 』

 私が持っている万年筆は現在4本。写真右から、『ウォーターマン クルトゥールのアンバー』。上記で紹介したルイス・エドソン・ウォーターマンがこの会社の創業者である。クルトゥールは価格2500円。何万・何十万とする万年筆に比べれば価格は非常に安いが、そのおかげか気負わず使える一本。私が日常最もよく使う万年筆だ。

 次はフランス『Recife』の万年筆。この青と赤のマーブル模様に一目惚れ。価格も5000円以下だった様に記憶している。20代前半に、現在は「プロメナ神戸」になっているビルの中の店舗で購入。

 真ん中の鼈甲柄の万年筆は『セーラー』の万年筆。高校の入学祝として叔母からもらった一本であり、私が初めて手にした万年筆だ。この万年筆を手にした時、大人の仲間入りをする事を認められた様な気がした。
 この万年筆、既に廃盤になった商品だとか。先日、三宮のナガサワ文具店で無料で行われた万年筆クリニックにこの万年筆を持って行った時、セーラーのペン職人である川口さん(その世界ではかなり有名な職人さんの様です。)から「これは廃盤になった商品だからね、大事に使ってくださいね。」と声をかけられた。川口さんは、白衣を着、ルーペでペン先を覗きながら、ペン先を調整していく。彼の親指と人差し指は、数々のペンを調整してきた事を物語るように、インクで黒くなり指先に染込んでいた。その会場に来られていたお客さんのほとんどが、私より年配の男性達であったが、若い頃はアイビールックのVANを着こなしていただろうと想像させる様な、おしゃれで品のあるおじさま達ばかりであった。
 この万年筆、ここ10年程使っていなかったのだが、この日をきっかけに再び使う様になった。握り具合が最もしっくりくる一本だ。

 赤と白のセルロイドの万年筆は『プラチナのキンギョ』。10年越しで欲しかったこの万年筆。今年の夏、自分への誕生日プレゼントとして購入。

 最後の一本は万年筆ではないが、ドイツのメーカー・『モンテベルデ・インティマのスカイブルー』。これを見ると、私、傾向として、セルロイドやマーブル模様のボディに魅力を感じるみたいだ。

 たかが文房具に、何万も何十万もかけるのはバカらしいと思う人もいるだろう。けれど、万年使えるから万年筆。大事に使い、時々メンテナンスをしてあげれば、長い間使える。インクが切れたらボディごと捨てなければいけない入れ替えのきかない100円ペンを、一生涯買い続けるより、カートリッジを入れ替えればずっと使える万年筆の方がエコだと感じている。

 文字は、多くの場合、自分以外の他者に向けて書く。その人の指先から生まれ出る文字には、その時々の、その人の思いや感情が流れていると思うから、書くという行為は、丁寧に扱われる時間だと思っている。万年筆で丁寧に文字を連ねていく時間は、私にとって神聖な気持ちすら感じる時間だ。一文字一文字を丁寧に書きたいと思えてくる。綺麗な字を書きたいという欲求が沸いてくる。その過程は、相手を思いながら文章を書く時間でもある。

 書くという日常的な行為を、ちょっぴり特別な時間にしてくれる魔法が万年筆にはある。

                               つばき 

 

 

by bigcamellia814 | 2005-12-03 15:51 | my favorite

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