アンティグアの日曜定食 ~グアテマラの弟~

a0038862_12305271.jpg 「グアテマラ行くなら、アンティグアって町に片桐はいりの弟が住んでいるよ。」という話を、メキシコのカボサンルーカスでダイバーとして働いている男性から聞いた。2003年の11月に住んでいたフィリピンを離れ、東南アジアを旅し、NYに渡って、アメリカ大陸を横断し、その後、5年ぶりに会う友達を訪ねてカボサンルーカスで1週間ばかり滞在しながら、その先の旅を考えていた時の事だった。そう教えてくれた彼も、そこに流れ着くまではバックパッカーで、中南米の色んな場所を旅して来たらしい。

 カボサンルーカスから飛行機でメキシコシティに。そこでしばらく滞在し、オアハカを経由してバスでグアテマラに入った。グアテマラシティに数日滞在し、その後に訪ねた町がアンティグアだった。観光地として有名なこの町には多くの外国人が訪れ、旅行者向けのスペイン語学校がたくさんある事でも有名だ。石畳が続くコロニアル調の(・・・と言ってもあの辺はどこでもそうですが。)アンティグアの町並みは本当に美しかった。

 その目抜き通りで、アクセサリーを売っている日本人女性と出会った。別にお店を構えている訳ではない。どこかの家の軒先を間借りして、アクセサリーを並べている。なんとなく気だるそうな雰囲気の女性だった。「彼女は何をどうしてココに辿り着き、すっかりこの町に馴染んだ様子でアクセサリーなんぞ売っているのだろう。」という興味も手伝って話し始めるうちに、偶然にも同郷で、しかも卒業した中学の1年後輩にあたることが判明した。お互い、その偶然にスッカリ驚き話が弾んだ。私は中学3年の時にその中学に転校したので、後輩に知り合いも少なく、当時お互いの存在はもちろん知らなかったのだが、同じ時期に、同じ空間を確実に共有していた2人が、あの田舎町からとんと離れた地球の裏側で偶然にも出くわすオモシロさに、得体の知れない者にちょっといたずらされた様な気持ちになった。

 片桐はいり著『グアテマラの弟』。そこに時々登場する「サトウ夫婦」というのが、まさにこの彼女の事である。(・・・と言っても本を読むまではスッカリ名前を忘れてしまっていたのだが、「そう言えばそんな名前だった。」と思い出した。)「サトウ夫婦」と呼ばれるくらいだから相方がいる訳で、私が彼女に出会った時、「最近結婚したんだよねぇー。」と言うので、勝手にグアテマラ人かと想像していたら、紹介されたのはコテコテの関西弁を喋る日本人男性だった。

 その2人に連れられて訪れたのが、片桐はいりさんの弟さんが経営するスペイン語学校で食べられる日曜定食。日頃はスペイン語学校のこの空間が、日曜の夜だけ、日本食を振舞う定食屋さんに変わるのだ。この本の中にも、日曜定食について書かれており、思わず、あの時食べたギョウザを思い出して懐かしさがこみ上げてきた。ギョウザ定食を食べ終わり、そこを出た後でサトウ夫婦・旦那が「あの人(私達にギョウザ定食を運んできてくれた体格の良い男性)、片桐はいりの弟さんだよ。グアテ人の女性と結婚して、こっちに住んでるんだ。」と教えてくれ、カボサンルーカスの友人が教えてくれた観光ポイント(?)を思いがけずきちんと抑えている自分がおかしかった。

 その後、オレンジ色の街灯に染まった石畳の町並みを歩きながら、サトウ夫婦・旦那が「茶ぁーでもしばきに行くかぁー!」と言ったので、3人連れ立ってオシャレなカフェで温かいお茶を飲みながら、サトウ夫婦がこの国で出会うまでのそれぞれの旅の話や、私達の故郷や中学校の先生の話でサトウ夫婦・妻と盛り上がった。その時撮った、3人それぞれが好き勝手な方向と視線で映っている妙な写真が1枚だけ私の手元に残っている。

 あれから一度メールを送ったが、彼女からの返信はなかった。旅での出会いと言うのは、そういうものだと思いながらも、あの時の出来事は、今でも深く印象に残っている。

 一方的ではあるが、この本を通して、サトウ夫婦がまだあの町に暮らし、そしてどうやら子どもが誕生し、彼女が母親になったことを知ることが出来た。片桐さんに、ありがとうといいたい気分だ。

 私にとっては、旅した時の出会いを思い出させてくれた本だが、グアテマラという地に根を張り、スッカリその土地の人となり暮らしている片桐さんの弟さんのたたずまいに、底なしの許容力・適応力の広さ・奥行きを感じ、我が身を省みて「まだまだだなぁ・・・」と思うのだった。

                                     つばき

  

 

by bigcamellia814 | 2007-10-14 13:41 | libro(本)

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