よく働き、土に触れ、身体をつかって生きる

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 先日、徳島に住む友達のおじいちゃんが亡くなった。
3月で91歳を迎える予定だった。

 2年前の夏、阿波踊りで存分に踊った夜、友達の家に泊まらせてもらった。
翌朝、玄関先でおじいちゃんと初対面。
一仕事を終え、畑から帰ってきたところだっただろうか。
「すみません。お邪魔しています」と頭を下げると、おじいちゃんの方が申し訳なさそうに頭を下げ、「まぁ、ゆっくりしてください」と言葉少なに語り、またどこかに出掛けていった。身体の小さい、おじいちゃんだった。私よりも小さかった。しかし、おじいちゃんの足取り、身のこなしの機敏さに気づき、私は目を奪われた。

 早朝、お母さんを徳島空港まで送るため出掛けていた友達が帰ってきた。
早速、「さっき、おじいちゃんに会ったよ。身体の小さい人だね。おじいちゃん、いったい何歳?なんか、スゴい動きが機敏だったんだけどぉ?」と尋ねると、友達が「ほぉーよ、もう89になるけど、めっちゃ元気なんよぉー!」と笑いながら教えてくれた。確かに、あれはもうすぐ90を迎えようとする人間の身のこなしだとは信じられぬ。

 ソファーに座って自分の家のように寛いでいた私に、友達が、徳島の名産・すだちを絞って作ったすだちジュースを持ってきてくれた。すだちの酸味が、さわやかに喉を潤す。フィリピンにいた時、よく飲んでいたカラマンシージュースを思い出す。
 「おいしいねぇ~」と喜んで飲んでいたら、友達が「椿さん、すだち、いっぱいあるから持って帰える?じいちゃん、取りに行ってくれるで~」と言ってくれた。
 翌朝、まだ朝もやがかかっている頃、おじいちゃんは自転車に乗り、畑の間を縫って、私のためにすだちを取りに出掛けてくれた。小さな体で、軽快に自転車をこぐ。私は、その様子を2階の窓から見つめていた。田舎の夏のすがすがしさに深呼吸しながら。

 数ヶ月後、友達と再会した時「おじいちゃん、元気?」と尋ねてみた。
「なんでいきなり、じいちゃんの話題?」と友達が可笑しそうに笑った。
そのうち、会えば友達の方からおじいちゃんの近況を話してくれるようになった。
いつの間にかそれは、私たちのお決まりの話題になった。
最近も、入院していたのは聞いていたが、もうすぐ退院すると言っていたし、また元気に畑に行けるようになるかなぁと思ってたんだけどね。

 おじいちゃんが亡くなった後、友達がこんなメールをくれた。
「じいちゃん、3月で91だったんだよ。
90歳で白内障の手術して、スーパーカーブの免許更新して、
若者のような身軽なバイクさばきで近所の人も、うちの友達も、
とても90歳の人の乗り方じゃないとびっくりしてた。(笑)」

 体を使って生きてくると、90になっても、人間はこんなに機敏な身のこなしが出来るのかと私を驚かせたおじいちゃん。若い頃から良く働き、土に触れ、作物を育て、身体を使って生きてきたからこその強靱さとしなやかな体の動き。

 人間は、自然の中で、身体を動かし生きていくほうがいい。
ということを私に教えてくれた人。

 友達のメールは、
「また、すだちの頃楽しみにしといてね!」と締めくくられていた。
すだちの香りを嗅ぐたびに、私のために自転車をこぎ、すだちを取りに行ってくれたあの後姿を思い出すだろう。

   つばき

by bigcamellia814 | 2012-01-24 23:49 | TSUBAKIng Times

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