1/21 朝日新聞「声」欄掲載 【有期雇用では労働者守れぬ】

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【有期雇用では労働者守れぬ】
労働組合役員 大椿 裕子
(神戸市兵庫区 38)

厚生労働省の労働政策審議会は、契約社員や期間従業員などの有期雇用契約について上限を5年とする建議を小宮山洋子厚労相に提出した。本人から申し入れがあれば無期雇用に転換する仕組みも導入した。

審議会に出席していた連合の労働者側委員は、この法案に「特段の異論はありません」と回答した。果たしてこの法案が有期雇用労働者の保護になるかどうか、私は非常に疑問に思う。

私は2010年3月末、有期雇用を理由に私立大学を雇い止めで解雇された。契約期間は1年ごとの更新で4年勤務した。解雇撤回の争議は現在も継続している。

大学の有期雇用労働者の契約期間の多くは3~5年に集中している。上限を設けたところで5年以下の契約期間の場合、解雇・雇い止めは免れない。契約期間を更に短く設定する雇用主が増え、解雇・雇い止めのサイクルはより短期化するだろう。

また厚労省は、無期雇用に転換後も「有期契約時の待遇を引き継ぐ」と言っており、正規労働者との待遇格差は縮まらない。上限を設けず、恒常的な業務は「原則無期雇用」としなければ、解雇・雇い止めは今後も後を絶たない。実効性が伴う法案を望みたい。

(2012年1月21日朝日新聞(関西版)「声」欄掲載)

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 1月21日(土)、朝日新聞(関西版)「声」欄に、私の投稿記事が掲載された。
昨年末、厚生労働省の労働政策審議会が、有期雇用契約について5年を上限とするという内容の建議を小宮山厚労相に提出した件について、有期雇用を理由に雇い止め解雇になった当事者として意見を書いた。「まさか、こんな法案が私たちの保護や救済になるとでも思っているの?」その思いをどうしても表明しないといけないと思ったからだ。

 「声」欄は500字の字数制限があり、編集者によりかなり手を加えられる。(編集者・内容・書き手の力量にもよるが)基本線はズレていないものの、今回は言葉の言い換えをかなり要求された。

 「果たしてこの法案が有期雇用労働者の保護になるかどうか、私は非常に疑問に思う」の部分は、「この法案が、有期雇用労働者の保護になると考えているなら大間違いだ」と書いていた。しかし編集者が、「大間違いだはキツ過ぎるでしょう?疑問に思うはどうですか?」と言ってくるので、「私は、大間違いだと思っています!」とかなり主張した後で、「大変、もしくは非常に疑問に思う、なら了解します」と言ったので、こういう文章になった。
 改めて言うが、私は相変わらず「大間違いだ」と思っている。
「非常に疑問に思う」などという生ぬるいレベルではない。

 今回、「雇い止め解雇」という表現について、
「雇い止め解雇という表現はない。雇い止めと解雇は違う」
「朝日新聞では使っていない」
「連合大阪の新聞にも、雇い止め解雇とは書かれていない。解雇・雇い止めとなっている」
と語気強く編集者に強く言われ、異論があることは伝えたが、
最終的に「朝日新聞として、雇い止め解雇という表現は使えない」と言われ、まずは掲載されることが最優先と判断し、その点は妥協するしかなかった。
 ちなみに、私が入っている労働組合は連合ではないし、労働運動を連合に基準を置いて考えることには、それこそ「非常に疑問がある」。今回の建議に対し、連合の労働者側委員が「特段の異論はありません」と発言したことひとつ取ってみても、連合の方針を労働運動の基準として受け止められるのは迷惑だ。それは、有期雇用を理由に雇い止め解雇になった当事者として、また、結成当初から非正規労働者の支援に取り組んできた労働組合の組合員の一人としてそう思う。

 編集者が「雇い止めと解雇は違う」と主張する時点で、それはかなり使用者よりの発想だ。有期雇用は別名「解雇付き雇用」と呼ばれている。使用者側の常套句、「有期雇用に納得してサインしたんだろう?だったら自己責任だ」という言葉を前に、労働者は言葉を失い自分を責め、司法も労働委員会もそれ以上は考えることをせず、有期雇用労働者の訴えを棄却する。
 当事者の立場からすれば、「解雇•雇い止め」と表現することで、有期雇用の問題の本質がうやむやにされてしまう感じがある。有期雇用において、「解雇」と「雇い止め」は常にセットだ。解雇するために、あらかじめ雇い止めする時期が設けられている。恒常的な業務にもかかわらず、期限が来れば辞めさせられる、同じポジションに、またすぐ別の人を雇用するのに期限を理由に辞めさせられる。当事者からすれば、有期雇用のこの状況は、単なる「雇い止め」という表現にはおさまり切らない理不尽さがある。だからこそ私は「雇い止め解雇」という言葉にこだわりたかった。

 労政審の建議が厚労相に提案されたこと、それに対し連合の労働者側委員が「特段の異論はありません」と回答したということを、私はインドで知った。報告が書かれたメールを見ながら、「本人から申し入れがあれば無期雇用に転換する」という一文に「どんだけ上から目線やねん!どんだけ、使用者よりやねん!」と突っ込みを入れ、連合の労働者側委員のどーしようもない回答に絶望し、猛烈に腹が立ち、「バカか!バカか!バカかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!」と声を押し殺すようにして怒った。隣に座っていたインド人たちが、変な目で私をチラ見していた。
 連合の労働者側委員さん、あなた、「労働者側委員」だよね?
私たちの「命」、あなたに預けたも同然なんだよ。
連合、ようやく非正規支援に乗り出したんじゃなかったかい?
本気でこの建議が、有期雇用労働者の保護や救済になると思ってんの?
今時、3割以上もしめる非正規労働者をろくに支援出来ないなら、労働組合名乗るなよ!
非正規の支援もします、やってます!とか言うなよ!
もう、しばらく怒りが収まらなかった。
悔しかった。悔しくてたまらなかった。

 この法案が通れば、8年後に再度見直しをするという。
8年後って、私、何歳?
もうさぁ、日本じゃ、労働市場から捨てられてる歳だよ。

 政治が混乱している中、さほどの議論もなく可決されそうだ。厚労省が、有期雇用労働者を保護する必要があると議論を始めたことは一歩前進だ。しかし、使用者側の責任義務も問われない、努力義務以下のこんな内容の法案を通したところで、何が解決すると言うのだろう?
 日本労働弁護団などは、「継続的に仕事があるのに雇い止めをした場合、新たな有期契約労働者の雇用を認めない」よう求めている。そういった制約を法律に反映しない限り、有期雇用労働者の保護にはなり得ない。今のままの内容では、有期雇用労働者は使用者にとって、相変わらず使い勝手の良い、使い捨て可能な労働力のままであり、「有期雇用労働者」の保護を謳いながら、実効性はない。

 法案を通すことを焦るより、今こそじっくり時間をかけ、実効性のある法律を作ることに時間を費やしてほしい。
 本気で、有期雇用労働者の保護を考えたいなら、有識者として、まずは私を労政審の会議に呼んでください。あなたたちが作成した建議が、有期雇用労働者の保護にも救済にもならないことを解説します!

※有期労働契約法改正については、水口洋介弁護士のこちらの文章が参考になります。
有期労働契約の在り方について-上限規制の副作用を抑制する方策は?

※こちらのブログにも有期雇用問題に関する情報が随時upされています。
2012/02/25 第3回「なんで有期雇用なん!?」集会@京都精華大学 開催決定! #NanNan the 3rd

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by bigcamellia814 | 2012-01-23 22:35 | 労働問題

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