福祉専門職の有期雇用問題①~朝日新聞:『福祉の窓口「質保てない」』

 以下、4月21日(水)の朝日新聞朝刊社会面に掲載されていた記事です。朝日新聞の清川卓史記者は、ワーキングプアや福祉の問題を積極的に取材されている記者さんですが、「この問題、よくぞ記事にしてくれました!」って気持ちです!

【福祉の窓口「質保てない」 
         広がる非正規職員雇用】 
 
 生活保護やドメスティック・バイオレンス(DV)被害者支援など福祉を支える担い手を、任期限定の非正規職員に置き換える動きが広がっている。数年で「雇い止め」になるため、「経験や知識が生かせず、サービスの質が保てない」と、利用者への影響を心配する声が上がっている。(永田豊隆・清川卓史)

《「任期付き」で人手満たす》
(ケースワーカー)
 生活保護を受ける人の日常生活を支えるため、個別に援助するケースワーカー。保護世帯の急増で、人員不足が深刻になっている。大阪府堺、豊中両市は2007年度から「任期付きケールワーカー」に採用を開始。契約は3年限りだ。
 ケースワーカー1人あたりの保護世帯数は堺97世帯、豊中125世帯。法定の標準数(80世帯)を超えるとはいえ、任期付きがいなければ140~190世帯に達していた。ある正職員の中堅ケースワーカーは「人手不足で現場はヘトヘト。任期付きがいなかったらパンクしている」と打ち明ける。
 豊中市は税収落ち込みなどで財源不足に陥り、基金を取り崩すなどして今年度予算を編成した。市生活福祉課の溝口学課長は「正職員を増やすのが本来のあり方だが、今の状況では難しい。」と話す。
 生活保護世帯が全国最多の大阪市は、5月から任期付きケースワーカー約130人を採用。こうした動きが広がるにつれて、「3年では十分な援助ができない」という不満も現場から高まっている。
 昨年まで2年半、任期付きケースワーカーを務めた女性(41)は「自分自身の先行きが見えないのに他人の支援なんて難しかった」と振り返る。乳幼児を抱えた母子世帯、うつや依存症、認知症の高齢者・・・根気よく相手に向き合い、適切に助言する力量が必要で、医療や介護などの制度も熟知していなければならない。思うような援助ができずに焦りが募った。3年目には、自分の次の就職先も気にかかるようになった。不眠になり、任期途中で退職した。
 大阪市で24年間、生活保護担当を務め、ケースワーカー養成講座を主宰する大阪市職員の谷口伊三美さん(50)は「10年ぐらい経験を積んで一人前。3年限定では『援助する力』が育たない」と指摘する。

《東京都「雇い止め」否定》 
(DVなどの相談員)
 「DV被害者からの相談には命がかかっている。経験と知識のある相談員が窓口にいないと十分な支援ができない」。東京都女性相談センターで、非常勤職員として働くベテラン婦人相談員(59)は、顔を曇らせる。
 雇用期間は1年間。都知事名の発令書には、「有期労働契約であり、(略)雇用更新を保障するものではない」との注意書きがある。これまで18回更新を繰り返した。
 月の報酬は20万円未満。昇給もボーナスもない。労働条件は厳しいが、専門職として仕事に誇りを感じてきた。
 ところが、東京都は2008年4月から非常勤職員の雇用制度を改正。定年をなくすかわり、契約の更新が4回(雇用期間は5年間)までに限定された。
 対象者約830人(09年4月現在)のなかには、婦人相談員や児童相談所の電話相談員らが含まれる。都は「再応募は可能であり、『雇い止め』ではない」と説明するが、再採用される保障はない。
 暴力から女性を守るためには警察や病院との連携が欠かせず、子どもが通う学校から相談が来ることもある。保護命令申し立て手続きで裁判所にも同行する。離婚などに関する法律知識も必要だ。
 「離婚調停で加害者の男性に追われるなど、身の危険を感じたこともあるが、実際のなかで危険の度合いも判断できるようになった。相談職員が短期間で入れ替わる体制では、支援の質が落ちてしまう。」労働組合や婦人相談員の団体からも、見直しを求める声があがる。

〈自治体財政難、正職員増やせず〉
 財政難のため行革を迫られる自治体では、正職員の減少を補う非正規職員の数が増えている。総務省調査では、08年4月1日現在の自治体の臨時・非常勤職員は約49万8千人(任期付き短時間職員など除く)。05年4月と比べ、約4万2千人(約9%)増加した。
 全日本自治団体労働組合(自治労)が08年に実施した全自治体アンケートでは、全職員に占める非正規職員の割合は27.6%。婦人相談員などを含む各種「相談員」に限ると、92.6%に跳ね上がる。
 立教大学コミュニティ福祉学部の湯沢直美教授(社会福祉学)は「DV支援は、対人援助の技術や制度の知識など高度な専門性が求められる。相談窓口の力量が落ちるのは利用者の安全確保の点からも問題。現場を担う人材をもっと大切にするべきだ」と指摘する。

2010年4月21日(水)朝日新聞 朝刊 社会面

by bigcamellia814 | 2010-04-23 11:24 | はたらくこと

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